なぁキュウリ

今年もお前を植える季節がやって来た。去年はひどい猛暑だったな。それでも俺は、お前に水を一滴もあげないアホですまなかった。

でもお前は、水を求めて根を深く深く伸ばした。雨が降った翌日は、葉や茎が立派に成長していたのをよく覚えてる。俺たち人間も、喉が乾いた時に飲む水は最高に上手いと感じるんだ。俺もお前も生き物だから、きっと同じ気持ちなんだろう。

そうそう、ウリハムシにも食べられたよな!でもお前は優しい奴だった。というか、お前にとっては計算済みなんだろう。その為に、お前はたくさんの葉をつけるんだから。

なぁキュウリ。人によってはさ、お前の実を立派に育てる為に葉を間引くらしいんだよ?それは、お前に危機感を与えるのが目的だ。成長する為には、時に俺たち人間も危機感を持たなければいけないのかもしれない。

でも俺は、お前に自然な姿で育って欲しいと思っているんだ。心も体も、余裕が大事だからね。

なんて偉そうに言ってしまったけど、お前は立派な実をつけて子孫の種を残した。夏の暑さにも負けず、水不足でヘタる事もなかった。

俺は驚いたし、感動したよ。親バカかもしれないけど、周りの草たちよりも、お前の姿は立派だったなぁ。

なぁキュウリ、覚えてるか?

風が強い日に、俺が勝手に子孫と決めて残しておいた実を、お前はドサッと落としたよな?あれさ、俺がお前の側に来るまで落とすのを我慢してくれてたと勝手に思ってるよ。

誰も信じないけど(笑)

大きく膨らんだ実は重いから、強い風でお前本体を傷つける恐れがあった。まだまだ小さい実もたくさんあったから、お前は古い実を犠牲にしてみんなを守ったんだ。

でも正直俺は、お前が目の前でドサッと実を落とした時、まだ種が出来てないんじゃないかと心配したんだ。せっかくここまで育てたのに……と、ガッカリしてたんだよ。

でも、俺がお前を育ててるつもりだったんだけど、実は逆だったんだな。お前の意思は、その実を開けてみてわかった。

俺がお前の立派な子孫だと思って残しておいた実は、お前にとってはハズレだったんだよな。その証拠に、種は全てプカプカと浮かんでしまったよ。

人間の俺には不思議に思う出来事だったけど、お前はただ子孫を残す為に一生懸命なだけなんだよな。

そんながんばり屋のお前が残してくれた大切な子孫が、春に元気な芽を出してくれた。俺はあまりの立派な二つ葉に、さすがお前の子孫だと感激したよ。

この調子なら、今年はどんな実を付けてくれるんだろうとワクワクした。でもゴメン。実は、若葉をウリハムシに食べられてしまって育たなかったんだ。

お前は種として見知らぬ土地にやってきて、本当に立派な子孫を残してくれた。その種には、お前が経験した数々の貴重な情報が入っていると思う。子孫が生き抜く為にな。

その内容は、水や肥料が少ないなら根を深く伸ばせとか、ウリハムシに葉を食べられるなら葉を増やせとかだと思う。

だけどお前が幼かった時は、ウリハムシに少し食べられただけで生き残ったんだよな。だから俺は、この経験も子孫に残したと思っていたんだ。

さすがにそれは、お前一代では克服出来なかったのかな。そんなお前はまだ、この土地に来て二年目の春になる。馴染むには、まだまだ時間が必要なんだろう。

俺が未熟者だから、お前は歩を会わせてくれたのかな。本当、色んな経験をさせてくれて感謝しかないよ。

でもさ、そんな中、今年もお前と同じようにウリハムシに食べられながらも、たくましく育った子孫がわずかにいたんだ。

喜んだのもつかの間、俺は本当に無力で、やっぱりお前らに教えられる事ばかりだと気がついた。

お前たちキュウリは、俺が育てたんじゃない。人間で言えば、俺は引っ越し先をお前に教えてあげただけなんだ。

立派な実を育て、子孫を残したのはお前自身の力だ。

だから応援したり見守る事しか出来ない俺は、お前たちキュウリの一番のファンでありたい。そしてお前が一生懸命育てた実を大切に収穫させて欲しい。感謝の気持ちを込めて、美味しく食べさせて欲しい。

お前の実は、みんなを笑顔にしてしまうんだ。俺の自慢のキュウリだ。

お前がどのように育ったキュウリなのかを周りに話すと、人はとても喜んでくれる。そんなお前が作った実だからこそ価値がある。お前は本当に凄いんだ。

俺はまた、今年もお前の残した子を大切にする。そして来年も、春の土に返していくからな。

なぁキュウリを書き終えて

突然唐突に書きましたが、僕の頭がおかしくなった訳ではありません(笑)

詞でもなく日記でもない変な文章ですが、感じるままに書いただけです。多分、面白くもなんともないでしょう。

でも、もしかしたら誰かの役に立つかもしれない。

いつかね?ではでは。